にせいが高いので、教室でもいちばん火に遠いこわれた戸のすきまから風のひゅうひゅう入って来る北東の隅《すみ》だったのです。
けれども今日は、こんなにそらがまっ青《さお》で、見ているとまるでわくわくするよう、かれくさも桑《くわ》ばやしの黄いろの脚《あし》もまばゆいくらいです。おまけに堆肥小屋《たいひごや》の裏《うら》の二きれの雲は立派《りっぱ》に光っていますし、それにちかくの空ではひばりがまるで砂糖水《さとうみず》のようにふるえて、すきとおった空気いっぱいやっているのです。もう誰《だれ》だって胸中《むねじゅう》からもくもく湧《わ》いてくるうれしさに笑い出さないでいられるでしょうか。そうでなければ無理《むり》に口を横《よこ》に大きくしたり、わざと額《ひたい》をしかめたりしてそれをごまかしているのです。
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(コロナは六十三万二百
※[#ト音記号、48−12]‥‥‥
※[#ト音記号、48−13]‥‥‥
ああきれいだ、まるでまっ赤《か》な花火のようだよ。)
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それはリシウムの紅焔《こうえん》でしょう。ほんとうに光炎菩薩《こうえんぼさつ》太陽《
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