の広場は 夜が明ける。」
[#ここで字下げ終わり]
「さあぼくも歌うぞ。」
(原稿数行空白)
「さあ叫ぼう。あたらしいポラーノの広場のために。ばんざーい。」わたくしは帽子を高くふって叫びました。
「ばんざあい。」
そして私たちはまっ黒な林を通りぬけて、さっきの柏《かしわ》の疎林《そりん》を通り古いポラーノの広場につきました。
そこにはいつものはんのきが風にもまれるたびに青くひかっていました。
わたくしどもの影はアセチレンの灯に黒く長くみだれる草の波のなかに落ちて、まるでわたくしどもは一人ずつ巨きな川を行く汽船のような気がしました。
いつものところへ来てわたくしどもは別れました。そこにほんの小さなつめくさのあかりが一つまたともっていました。わたくしはそれを摘《つ》んで、えりにはさみました。
「それではさよなら。また行きますよ。」ファゼーロは云いながら、みんなといっしょに帽子をふりました。みんなも何か叫んだようでしたが、それはもう風にもって行かれてきこえませんでした。そしてわたくしもあるき、みんなも向うへ行って、その青い、風のなかのアセチレンの灯と黒い影がだんだん小さくなったので
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