るのかい。」
 醋酸をつくっていたさっきの年老った人が、云いました。みんなはまたどっと笑いました。
「こんどは呑むんだ。冷たいぞ。」ファゼーロはまたみんなにつぎました。コップはつめたく白くひかり風に烈しく波だちました。
「さあ呑むぞ。一二三。」みんなはぐっと呑みました。私も呑んで、がたっとふるえました。
「では僕がうたうぞ。ポラーノの広場のうた。
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つめくさのはなの 終る夜は
ポランの広場の  秋まつり
ポランの広場の  秋のまつり
水を呑まずに   酒を呑む
そんなやつらが  威張っていると
ポランの広場の  夜が明けぬ
ポランの広場も  朝にならぬ。」
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 みんなはパチパチ手を叩いてわらいました。その声もすぐ風がどうっと来て、むかしのポラーノの広場の方へ持って行ってしまいました。
「おれもうたうぞ。」ミーロがたちました。
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「つめくさの花の  しぼむ夜は
 ポランの広場の  秋まつり
 ポランの広場の  秋のまつり
 酒くせの悪い   山猫は
 黄いろのシャツで 遠くへ遁げて
 ポランの広場は  朝になる
 ポラン
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