ないんだ。ほんとうに骨組みと要るとこだけやればいいんだから。あとは仕事がひとりでそれを教えるし、だんだんじぶんで読んで行けるから。」
「ぼくらは冬にあの工場へ集ったりしていろいろこさえようじゃないか。ファゼーロが皮を染めたりするだろう、ぼくはへただけれどもチョッキはつくれるよ。ミーロはいつでも上手に帽子をこしらえているんだから、仕事にやったらもっと上手にできるだろう。」
「そうだそうだ。ぼくらは冬につくったものをお互で取り換えようねえ。ぼくは木をくってこしらえるものならすきだよ。」
「やろうやろう。夏にははたけや野原ではたらいて食べるものをとるし、冬にはお互で要るものをこしらえて取りかえれば……。」
ミーロがにわかに風があんまり烈しく吹いてきたので眼を細くしながら坐りました。はんの木もまるで弓のようになりました。
その風のなかでわたくしはまた立ちました。
「そうだ、諸君、あたらしい時代はもう来たのだ。この野原のなかにまもなく千人の天才がいっしょに、お互に尊敬し合いながら、めいめいの仕事をやって行くだろう。ぼくももうきみらの仲間にはいろうかなあ。」
「ああはいっておくれ。おい、みんな
前へ
次へ
全95ページ中89ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング