《さくさん》をつくった方がいいと思う。あのときは会社だなんて、あんまりみんなでやったから損になったんだけれども、おれたちだけでやるんなら、手間にはきっとなるからな。十瓶だって二十瓶だって引き受けると町の薬屋でも云ってくるからな。」
「そうだ。」ファゼーロが云いました。
「ここの下へたいた煙を、となりの酒をつくったむろに通して、あすこでハムをつくるといいな。」
「それはサートもそう云ってるよ。とにかくこの罐へ入れてやれば、木炭はそっくりとれるしさ、ハムもすぐには売れなくたって仲間へだけは頒《わ》けられるからな。」
「さあよし、やろう。キューストはたびたび来て見てくれるだろう。」
「ああ、ぼくは畜産の方にも林産製造の方にも友だちがあるから、みんなさそって来てやるよ。ポラーノの広場のはなしをしてね。」
「そうだ、ぼくらはみんなで一生けん命ポラーノの広場をさがしたんだ。けれども、やっとのことでそれをさがすと、それは選挙につかう酒盛りだった。けれども、むかしのほんとうのポラーノの広場はまだどこかにあるような気がしてぼくは仕方ない。」
「だからぼくらは、ぼくらの手でこれからそれを拵えようでないか。
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