かります。」
「さがすさがさんはこっちの考えだ。お前がかくしたろう。」
「知りません。」
「起訴するぞ。」
「どうでも。」二人は顔を見合せました。
「では訊ねるが君はどういうことでファゼーロと知り合いになったか。」
「ファゼーロがわたくしの遁げた山羊をつかまえてくれましたので。」
「うん。それはいつ、どこでだ。」
「五月のしまいの日曜、二十七日でしたかな。」
「うん。二十七日。どこでだ。」
「あれは何という道路ですか。教会の横から、村へ出る道路を一キロばかり行った辺です。」
「うん。おまえは二十七日の晩ファゼーロと連れだって村の園遊会へ闖入《ちんにゅう》したなあ。」
「闖入というわけではありませんでした。明るくていろいろの音がしますので行って見たのです。」
「それからどうした。」
「それからわたくしどもが酒を呑まんと云いますとテーモが怒ったのです。」
「テーモはお前とはいつから知り合いか。」
「ファゼーロと知り合いになったときです。そのときテーモはファゼーロが仕事に行く時間をわたくしが邪魔したといって革むちをわたくしの顔の前で鳴らしました。」
「それだけか。」
「はい。」
「園遊会でそ
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