どうしてですか。」
「お負《ま》けいたしておきましょう。」
「まあ取って下さい。」
「いいえ、いただくほどじゃありません。」
「そうですか。ありがとうございました。そんなら一寸《ちょっと》向《むこ》うの番小屋《ばんごや》までおいで下さい。お茶でもさしあげましょう。」
「いいえ、もう失礼《しつれい》いたします。」
「それではあんまりです。一寸お待《ま》ち下さい。ええと、仕方《しかた》ない、そんならまあ私の作った花でも見て行って下さい。」
「ええ、ありがとう。拝見《はいけん》しましょう。」
「そうですか。では。」
その気紛《きまぐ》れの洋傘直しと園丁《えんてい》とはうっこんこうの畑《はたけ》の方へ五、六歩|寄《よ》ります。
主人らしい人の縞《しま》のシャツが唐檜《とうひ》の向うでチラッとします。園丁はそっちを見かすかに笑い何か云《い》いかけようとします。
けれどもシャツは見えなくなり、園丁は花を指《ゆび》さします。
「ね、此《こ》の黄と橙《だいだい》の大きな斑《ぶち》はアメリカから直《じ》かに取《と》りました。こちらの黄いろは見ていると額《ひたい》が痛《いた》くなるでしょう。」
「え
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