《なかま》にはいりましょうか。行きましょう。」
「行きましょう。おおい。おいらも仲間に入れろ。痛《いた》い、畜生《ちくしょう》。」
「どうかなさったのですか。」
「眼《め》をやられました。どいつかにひどく引っ掻《か》かれたのです。」
「そうでしょう。全体《ぜんたい》駄目《だめ》です。どいつも満足《まんぞく》の手のあるやつはありません。みんなガリガリ骨《ほね》ばかり、おや、いけない、いけない、すっかり崩《くず》れて泣《な》いたりわめいたりむしりあったりなぐったり一体あんまり冗談《じょうだん》が過《す》ぎたのです。」
「ええ、斯《こ》う世《よ》の中が乱《みだ》れては全《まった》くどうも仕方《しかた》ありません。」
「全くそうです。そうら。そら、火です、火です。火がつきました。チュウリップ酒《しゅ》に火がはいったのです。」
「いけない、いけない。はたけも空もみんなけむり、しろけむり。」
「パチパチパチパチやっている。」
「どうも素敵《すてき》に強い酒《さけ》だと思いましたよ。」
「そうそう、だからこれはあの白いチュウリップでしょう。」
「そうでしょうか。」
「そうです。そうですとも。ここで一
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