よく利く薬とえらい薬
宮沢賢治

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)経《た》って

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)くるくるん[#「ん」は小書き]に
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 清夫は今日も、森の中のあき地にばらの実をとりに行きました。
 そして一足冷たい森の中にはひりますと、つぐみがすぐ飛んで来て言ひました。
「清夫さん。今日もお薬取りですか。
 お母さんは どうですか。
 ばらの実は まだありますか。」
 清夫は笑って、
「いや、つぐみ、お早う。」と言ひながら其処《そこ》を通りました。
 其の声を聞いて、ふくろふが木の洞《ほら》の中で太い声で言ひました。
「清夫どの、今日も薬をお集めか。
 お母は すこしはいゝか。
 ばらの実は まだ無くならないか。
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ゴギノゴギオホン、
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから6字下げ]
今日も薬をお集めか。
[#ここで字下げ終わり]
 お母は すこしはいゝか。
 ばらの実は まだ無くならないか。」
 清夫は笑って、
「いや、ふくろふ、お早う。」と言ひながら其処を通りすぎました。
 森
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