ちキッコは算術も作文もいちばん図画もうまいので先生は何べんもキッコさんはほんとうにこのごろ勉強のために出来るようになったと云《い》ったのでした。二|学期《がっき》には級長《きゅうちょう》にさえなったのでした。その代《かわ》りもうキッコの威張《いば》りようと云ったらありませんでした。学校へ出るときはもう村中の子供《こども》らをみんな待《ま》たせて置《お》くのでしたし学校から帰って山へ行くにもきっとみんなをつれて行くのでうちの都合《つごう》や何かで行かなかった子は次《つぎ》の日みんなに撲《なぐ》らせました。ある朝キッコが学校へ行こうと思ってうちを出ましたらふとあの鉛筆《えんぴつ》がなくなっているのに気がつきました。さあキッコのあわて方ったらありません。それでも仕方《しかた》なしに学校へ行きました。みんなはキッコの顔いろが悪《わる》いのを大へん心配《しんぱい》しました。
算術《さんじゅつ》の時間でした。「一ダース二十|銭《せん》の鉛筆を二ダース半ではいくらですか。」先生が云いました。みんなちょっと運算《うんざん》してそれからだんだんさっと手をあげました。とうとうみんなあげました。キッコも仕方
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