まなづるとダァリヤ
宮沢賢治

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)叩《たた》きつけ

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#小書き片仮名ヰ、243−15]
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 くだものの畑の丘のいただきに、ひまはりぐらゐせいの高い、黄色なダァリヤの花が二本と、まだたけ高く、赤い大きな花をつけた一本のダァリヤの花がありました。
 この赤いダァリヤは花の女王にならうと思ってゐました。
 風が南からあばれて来て、木にも花にも大きな雨のつぶを叩《たた》きつけ、丘の小さな栗《くり》の木からさへ、青いいがや小枝をむしってけたたましく笑って行く中で、この立派な三木のダァリヤの花は、しづかにからだをゆすりながら、かへっていつもよりかゞやいて見えて居《を》りました。
 それから今度は北風又三郎が、今年はじめて笛のやうに青ぞらを叫んで過ぎた時、丘のふもとのやまならしの木はせはしくひらめき、果物《くだもの》畑の梨《なし》の実は落ちましたが、此《こ》のたけ高い三本のダァリヤは、ほんのわづ
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