のとこを、こっちへ来るから、ぼくは、きっと発破だとおもった。しゅっこも、大きな白い石をもって、淵の上のさいかちの木にのぼってゐたが、それを見ると、すぐに、石を淵に落して叫んだ。
「おゝ、発破だぞ。知らないふりしてろ。石とりやめて、早くみんな、下流《しも》へさがれ。」
そこでみんなは、なるべくそっちを見ないやうにしながら、いっしょに下流《しも》の方へ泳いだ。しゅっこ[#「しゅっこ」に傍点]は、木の上で手を額にあてて、もう一度よく見きはめてから、どぶんと逆《さかさ》まに淵へ飛びこんだ。それから水を潜《くぐ》って、一ぺんにみんなへ追ひついた。
ぼくらは、淵の下流《しも》の、瀬になったところに立った。
「知らないふりして遊んでろ。みんな。」しゅっこ[#「しゅっこ」に傍点]が云《い》った。ぼくらは、砥石《といし》をひろったり、せきれいを追ったりして、発破のことなぞ、すこしも気がつかないふりをしてゐた。
向ふの淵の岸では、庄助が、しばらくあちこち見まはしてから、いきなりあぐらをかいて、砂利の上へ座ってしまった。それからゆっくり、腰からたばこ入れをとって、きせるをくはへて、ぱくぱく煙をふきだし
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