のぼって来ました。
うずのしゅげは光ってまるで踊《おど》るようにふらふらして叫《さけ》びました。
「さよなら、ひばりさん、さよなら、みなさん。お日さん、ありがとうございました」
そしてちょうど星が砕《くだ》けて散《ち》るときのように、からだがばらばらになって一本ずつの銀毛《ぎんもう》はまっしろに光り、羽虫《はねむし》のように北の方へ飛《と》んで行きました。そしてひばりは鉄砲玉《てっぽうだま》のように空へとびあがって鋭《するど》いみじかい歌をほんのちょっと歌ったのでした。
私は考えます。なぜひばりはうずのしゅげの銀毛《ぎんもう》の飛《と》んで行った北の方へ飛《と》ばなかったか、まっすぐに空の方へ飛《と》んだか。
それはたしかに、二つのうずのしゅげのたましいが天の方へ行ったからです。そしてもう追《お》いつけなくなったときひばりはあのみじかい別《わか》れの歌を贈《おく》ったのだろうと思います。そんなら天上へ行った二つの小さなたましいはどうなったか、私はそれは二つの小さな変光星《へんこうせい》になったと思います。なぜなら変光星《へんこうせい》はあるときは黒くて天文台からも見えず、あるときは蟻《あり》が言《い》ったように赤く光って見えるからです。
底本:「銀河鉄道の夜」角川文庫、角川書店
1969(昭和44)年7月20日改版初版発行
1993(平成5)年6月20日改版71版発行
入力:薦田佳子
校正:平野彩子
2000年8月25日公開
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全3ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング