が言つた
  ※[#始め二重パーレン、1−2−54]おらあど死んでもいゝはんて
   あの林の中さ行ぐだい
   うごいで熱は高ぐなつても
   あの林の中でだらほんとに死んでもいいはんて※[#終わり二重パーレン、1−2−55]
鳥のやうに栗鼠のやうに
そんなにさはやかな林を恋ひ
 (栗鼠の軋りは水車の夜明け
  大きなくるみの木のしただ)
一千九百二十三年の
とし子はやさしく眼をみひらいて
透明薔薇の身熱から
青い林をかんがへてゐる
フアゴツトの声が前方にし
Funeral march があやしくいままたはじまり出す
  (車室の軋りはかなしみの二疋の栗鼠)
 ※[#始め二重パーレン、1−2−54]栗鼠お魚たべあんすのすか※[#終わり二重パーレン、1−2−55]
  (二等室のガラスは霜のもやう)
もう明けがたに遠くない
崖の木や草も明らかに見え
車室の軋りもいつかかすれ
一ぴきのちひさなちひさな白い蛾が
天井のあかしのあたりを這つてゐる
  (車室の軋りは天の楽音)
噴火湾のこの黎明の水明り
室蘭通ひの汽船には
二つの赤い灯がともり
東の天末は濁つた孔雀石の縞
黒く立つものは樺の木
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