れるものは二条の茶
蛇ではなくて一ぴきの栗鼠
いぶかしさうにこつちをみる
  (こんどは風が
   みんなのがやがやしたはなし声にきこえ
   うしろの遠い山の下からは
   好摩の冬の青ぞらから落ちてきたやうな
   すきとほつた大きなせきばらひがする
   これはサガレンの古くからの誰かだ)
[#地付き](一九二三、八、七)
[#改ページ]

  噴火湾(ノクターン)


稚《わか》いゑんどうの澱粉や緑金が
どこから来てこんなに照らすのか
  (車室は軋みわたくしはつかれて睡つてゐる)
とし子は大きく眼をあいて
烈しい薔薇いろの火に燃されながら
  (あの七月の高い熱……)
鳥が棲み空気の水のやうな林のことを考へてゐた
  (かんがへてゐたのか
   いまかんがへてゐるのか)
車室の軋りは二疋の栗鼠《りす》
   ※[#始め二重パーレン、1−2−54]ことしは勤めにそとへ出てゐないひとは
    みんなかはるがはる林へ行かう※[#終わり二重パーレン、1−2−55]
赤銅《しやくどう》の半月刀を腰にさげて
どこかの生意気なアラビヤ酋長が言ふ
七月末のそのころに
思ひ余つたやうにとし子
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