ジ]

  谷


ひかりの澱
三角ばたけのうしろ
かれ草層の上で
わたくしの見ましたのは
顔いつぱいに赤い点うち
硝子|様《やう》鋼青のことばをつかつて
しきりに歪み合ひながら
何か相談をやつてゐた
三人の妖女たちです
[#地付き](一九二二、四、二〇)
[#改ページ]

  陽ざしとかれくさ


    どこからかチーゼルが刺し
    光《くわう》パラフヰンの 蒼いもや
    わをかく わを描く からす
    烏の軋り……からす器械……
(これはかはりますか)
(かはります)
(これはかはりますか)
(かはります)
(これはどうですか)
(かはりません)
(そんなら おい ここに
 雲の棘をもつて来い はやく)
(いゝえ かはります かはります)
    ………………………刺し
    光パラフヰンの蒼いもや
    わをかく わを描く からす
    からすの軋り……からす機関
[#地付き](一九二二、四、二三)
[#改ページ]

  雲の信号


あゝいゝな せいせいするな
風が吹くし
農具はぴかぴか光つてゐるし
山はぼんやり
岩頸《がんけい》だつて岩鐘《がんしよう》だつ
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