る
焼杭の柵はあちこち倒れ
はるかに黄いろの地平線
それはビーアの澱《おり》をよどませ
あやしいよるの 陽炎と
さびしい心意の明滅にまぎれ
水いろ川の水いろ駅
(おそろしいあの水いろの空虚なのだ)
汽車の逆行は希求《ききう》の同時な相反性
こんなさびしい幻想から
わたくしははやく浮びあがらなければならない
そこらは青い孔雀のはねでいつぱい
真鍮の睡さうな脂肪酸にみち
車室の五つの電燈は
いよいよつめたく液化され
(考へださなければならないことを
わたくしはいたみやつかれから
なるべくおもひださうとしない)
今日のひるすぎなら
けはしく光る雲のしたで
まつたくおれたちはあの重い赤いポムプを
ばかのやうに引つぱつたりついたりした
おれはその黄いろな服を着た隊長だ
だから睡いのはしかたない
(おゝおまへ《オー ヅウ》 せはしいみちづれよ《アイリーガー ゲゼルレ》
どうかここから急いで去らないでくれ《アイレドツホ ニヒト フオン デヤ ステルレ》
※[#始め二重パーレン、1−2−54]尋常一年生 ドイツの尋常一年生※[#終わり二重パーレン、1−2−55]
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