嚼《そしやく》するといふ風にあるきながら
本部へはこれでいゝんですかと
心細《こころぼそ》さうにきいたのだ
おれはぶつきら棒にああと言つただけなので
ちやうどそれだけ大《たい》へんかあいさうな気がした
けふのはもつと遠くからくる

   パート三[#ゴシック体]

もう入口だ〔小岩井農場〕
 (いつものとほりだ)
混《こ》んだ野ばらやあけびのやぶ
〔もの売りきのことりお断り申し候〕
 (いつものとほりだ ぢき医院もある)
〔禁猟区〕 ふん いつものとほりだ
小さな沢と青い木《こ》だち
沢では水が暗くそして鈍《にぶ》つてゐる
また鉄ゼルの fluorescence
向ふの畑《はたけ》には白樺もある
白樺は好摩《かうま》からむかふですと
いつかおれは羽田県属に言つてゐた
ここはよつぽど高いから
柳沢つづきの一帯だ
やつぱり好摩にあたるのだ
どうしたのだこの鳥の声は
なんといふたくさんの鳥だ
鳥の小学校にきたやうだ
雨のやうだし湧いてるやうだ
居る居る鳥がいつぱいにゐる
なんといふ数だ 鳴く鳴く鳴く
Rondo Capriccioso
ぎゆつくぎゆつくぎゆつくぎゆつく
あの木のしんにも一ぴき
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