夢の国
宮原晃一郎
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)吉《よし》ちやんは
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)大変|悦《よろこ》びまして、
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)さら/\と
−−
一
雪の降る日でした。
吉《よし》ちやんは机について学課のお浚《さら》へをしてをりました。障子の立つてゐる室の内は、薄暗くて、まるで夕暮の様でした。外にはまだ盛んに雪が積るらしく、時々木の枝からさら/\と雪の落ちる音が聞えました。
「アヽ/\/\」
吉ちやんは大きな口をあけて、欠伸《あくび》をしました。ふと誰《だれ》やら自分を呼ぶ声がしますから、振り返つてみますと、暗い片隅《かたすみ》に、白いお鬚《ひげ》の長く垂れたおぢいさんが、蝙蝠傘《かうもりがさ》を手にもつて、立つて居りました。
「僕《ぼく》を呼んだのは、あなたですか。」
吉ちやんは不思議さうにきゝました。
「あゝわしが呼んだ、お前は大変勉強するね、少し休まないか、面白いものを見せてあげるよ。」
吉ちやんは変なおぢいさんだ。一体どこから
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