けました。
それは綺麗な不思議な絵をかいた傘でした。子供の顔をした花やら、人間のやうに歩く動物やら、まだみたこともない形や色をしたものが、沢山にかいてありました。しかも、それが活動写真のやうに、動くのでした。
「これが夢の国ですか。変なところですねえ。日本とはまるでちがつてゐる。」
吉ちやんが言ひますと、オレ・リユク・ウイは、
「日本のやうなところもあるよ。そこが見たければ、つれて行つてあげるよ。ちよつと眼をつぶりなさい。」
と、言ひました。
二
「あゝ本当に不思議々々々。」
と、吉《よし》ちやんは叫びました。
「おぢいさんこゝはどこ? えゝ? 浅草の観音様?」
「さあ、さうかも知れない。夢の国の処《ところ》の名はむづかしいから、言はないで置かう。」
「あれ、あすこに石の鳥居が見えますよ。けれども仲見世《なかみせ》はありませんね。」
「うん、そんなものはない、けれどもね、一つお前に言つて置くことがある。それはお前にどつさりお土産をやらうといふことだ。併《しか》し、わしのいふとほりにしなければいけないよ。いゝか、あの鳥居が三つあるから、そのうちの一番目のでも二番目のでも、そこにあつたものは、お前が取つてもいゝ。けれどもそんなものは本当に、お前のためにならんから、欲しくても取らないで、三番目の鳥居に行つてから、始めて取るのだよ。それではわしはこゝで失敬する。日本へ帰るのはわけはない。お土産さへ取れば、あとは独りで帰れるから。」
オレ・リユク・ウイはさう言つたかと思ふと、ふとその姿を消してしまひました。
一番目の鳥居に来てみますと、果して、そこに一つの豆自動車がありました。けれどもその自動車は、あたり前の形をしてゐませんで、前の方が竜の首になつて、乗るところは丁度その背中に当るところでした。そして金と銀とで全体ができて、いろ/\の宝石、ダイヤモンド、紅玉《ルビー》、碧玉《サフアイヤ》、エメラルドなどでかざつて、ぴか/\光つてをりました。
「おや、珍らしい自動車だなあ。」
吉ちやんは思はず、足をそこに止めて、見とれてをります。
「僕《ぼく》もこんな自動車が一つ欲しいな。」
おぢいさんの言つたことなんか忘れて、吉ちやんは、欲しいと思ひました。すると、直《す》ぐに、
「さあ/\お取んなさい/\/\/\、お取りになれば、あなたのものですよ。誰《だれ》も何
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