鳩の鳴く時計
宮原晃一郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)鳩《はと》が

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)お炙《きう》[#「炙」はママ]をすゑられる

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ごく/\
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    一

 一時間ごと、三十分ごとに、時計の上の方にある小さな戸を押し開いて、赤いくちばしをした鳩《はと》が顔を出して、時間の数だけホウホウとなく時計のあることは、みなさん御存じでせうね。わたしが今こゝにお話しようといふのは、この時計のことです。
 あるりつぱなお家《うち》の応接間に、この鳩のなく時計がかゝつてゐました。こゝの御主人がもう二十幾年前にスヰツツルに旅行をしたときお土産に買つて帰つたものでした。そのじぶんには、かういふ時計は、日本にはまだごく/\僅《わづ》かばかりより来てゐなかつたので、はじめこれを見た人はたいへん珍らしがつて、又非常にたくみな仕掛けになつてゐると感心するのでした。とりわけ子供たちは、この時計がすきで/\たまらないのでした。
「あれ、可愛《かはい》い鳥が出て
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