せたり、又軽いボートにのつて、帆をかけたりします。空の中に住まつてゐるので、たつた一人、恐《こは》いものは、雷様だけです。何しろ、雷様ときては、怒りつぽく、よく空をごろ/\と、足をふみ鳴らして、雲の人たちの家を叩《たた》きまはるからむりもないわけです。

 雲の人たちは、七色の虹猫がたづねてくれたのを大へんよろこんで、ていねいに挨拶《あいさつ》しました。
「まあ、ちやうどいゝところへお出《い》でなすつた。」と、雲の人たちは言ひました。「じつは、風の神さんのおうちで、大きなお祝ひがあるのですよ。それは、あすこの一番うへの息子《むすこ》の北の風さんが、今日、魔法の島の王様のお姫様をお嫁さんにお迎へなさるんです。」
 七色の虹猫は、こんなこともあらうかと、ちやんと尻尾のさきの袋に、いろ/\の品物を用意してきたのでした。
 ほんとに、びつくりするほどの立派な御婚礼だつたのです。
 誰《だれ》もかれも、みんなやつて来ました。お客様のうちには、慧星《はうきぼし》も見えました。よつぽどりつぱな宴会でなければ、めつたに出たことのない慧星が見えたのです。
 又北極光も、何とも言へない、美しい光りの服を着て出ました。むろん、花嫁の両親、魔法島の王とその真珠貝の妃《きさき》とはそこに出席しました。
 御馳走《ごちそう》がでて、みんながにぎやかに、面白く喰《た》べたり、飲んだりして、話してゐるまつ最中、そこへあたふたと飛びこんで来たのは燕《つばめ》でした。その話によると、大男の雷様が、えらい勢ひで、こつちをさして走つてくる。なんでも、貿易風が大急ぎで通るとき、ひよつと、雷様の寝てゐた足のさきにけつまづいたから、すつかり怒らしてしまつたんだといふことでした。
「それはまあ、どうしたらいゝだらう。」と、誰《だれ》もかれも青くなつて、口々に言ひました。「お祝ひもめちやめちやに荒らされつちまふだらう。」
 そして、お客様も主人も、あわてゝ、ちり/″\に逃げ出しました。
 けれども、七色の虹猫は落ちつきはらつてゐました。この猫はなか/\智慧《ちゑ》があつたのです。
 猫は、そつとひとり、テイブルの下にもぐりこみ、そのもつて来た小さな袋を開けて、中のものをあらためながら、ぢつと考へてをりました。
 が、間もなく、出て来ました。
「どうにか、私が雷様を来させないやうにしてみませう。」と、猫は申しました。
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