ない場合にせまりました。で、豆小僧はも一つ大般若のお守札を出して、ほふり出すと、たちまちそこに高い/\、天までとどくやうな高い塀《へい》が出来ました。
 悪魔はきり/\歯がみをして、しばらくその塀を睨んでゐましたが、何やら呪文《じゆもん》をとなへると、すぐその指の尖《さき》が章魚《たこ》の疣《いぼ》のやうになつたので、それでべた/\と壁に吸ひついて、その塀をのりこえて、また豆小僧のあとを追ひました。


    四

 又、もう二足三足で、豆小僧は悪魔におさへられようとする、あぶない目にあひましたので、今度は三枚目の大般若《だいはんにや》のお守札をそこへ投げました。
 すると、豆小僧と悪魔との間に、さつと一つの大きな/\川が出来ました。
 悪魔はもう一歩と、足を出しかけたところへ、急に、大きな川が出来たものですから、はづみをくらつて、あぶなくその川のなかへおち込むところでした。
 川には水がまん/\とたたへて、その流れの早いことは、浮いてゐる塵《ちり》や芥《あくた》が矢を射るより早く流れ去るのを見ても分りました。おまけに、向ふ岸まで一たい何里あるか分らないほどの広さでした。
 さすがの
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