者や、近所の人達を呼んで御馳走《ごちそう》を致します。子供達は甘酒や御赤飯がふるまはれるので、氏神祭りといへば、楽しいものゝ一つです。
 ある時、一人の神主さんがありました。矢張りこのお祀りによばれて方々を祝詞を上げて歩いてをりました。ところが、よばれて行つた先で出す御礼は玄米一升に、一厘銭十三ときまつてをりました。至つて僅《わづ》かなものです。けれども御馳走だけはうんと出ますが、一人で一日四五軒も行くのですから、とても出された御馳走をみんな食べるわけにはいきません、といつて持つて帰ることも出来ないので、大変残念に思つてをりました。
「どうにかして、皆《みんな》でなくても、出されたものを大てい喰《た》べつちまうことはできないかしら?」
 ぼんやりと考へながら、或日神主は、谷の傍《わき》の山道をうろ/\としてゐますと、一|疋《ぴき》の大蛇《だいぢや》が向うへ出てきましたので、びつくりして、そこの岩陰にかくれてをりますと、大蛇は神主のゐることを知らないものゝやうに、大きなお腹《なか》をかゝへて、だるさうにして、谷のふちの辺《あたり》を何やら捜してをりました。神主さんは恐《こは》いけれど、何
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