て、とりもどして来ませう。」
「だつて、もう狐は骨ものこさずたべつちまつただらう。」
「いゝえ、あいつは、すぐにはたべません。これから飼つておいて、もつと大きく、おいしくなつてからたべるのです。」
「さうか。ぢや早くいかう。」
「したくをしますから、ちよつとおまちなさい。」
黒猫はさう言つたかと思ふと、すぐどこへか行つて、長い外套《ぐわいたう》と、長靴《ながぐつ》と、三味線《さみせん》の竿《さを》の短かいのとをもつて来ました。
「さア、これでよろしい。まゐりませう。」
四
幸坊《かうばう》は黒猫《くろねこ》について、狐《きつね》の巣へ行きました。穴の口もとに来ると、黒猫は三味線《さみせん》をひいてうたひ出しました。
「シヤン、シヤン、ツン、チントン。ハアよいやな。金のいとを張つた琴だぞ。きつね、きつねのおうちはこゝか。かはいゝきつねの子はどこぢや。」
狐はその歌をきくと、一たいだれがうたつてゐるのだらうと思つて、まづ、じぶんの子どもを穴の外に出して、見させました。
「しめたツ。」と、黒猫は手早く子狐を取りおさへてじぶんの外套のすそにおしこんでしまひました。
そして
前へ
次へ
全12ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮原 晃一郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング