また、「チヤンリン、チントン、ハアよいやな」と、面白くうたつてゐると、狐は子狐がかへらないのに心配して、穴からそうツと顔を出すところを、黒猫がその目に爪《つめ》をうちこんだので、狐はおそろしい泣声をあげて、穴から飛出し、黒猫と大げんかをはじめました。
 そのさわぎに、をんどりがかつ/\と鳴いて飛出しましたから、幸坊は大急ぎで、それをつかまへて一さんにうちの方へ走りましたが、それから先のことは、じぶんでも、どうなつたかわからなくなりました。


    五

 やうやく正気にかへつた幸坊《かうばう》は、じぶんのうちの床の上にねてゐました。
「とうと[#「とうと」に傍点]は?」と、幸坊はまづかう聞きました。お母さんが枕《まくら》もとにゐて答へました。
「気がついたかい。やれ/\安心した。おまいは、どうしたんだか、あの森の中にきぜつしてゐたのだよ。」
「とうと[#「とうと」に傍点]は?」と、幸坊は又きゝました。
「心配おしでない。かへつて来たよ。」
「黒は?」
「黒もかへつて来たよ。けれども大へんけがをしてゐるよ……」
 幸坊は二三日、つかれて、床にねてゐました。がおきあがると、お母さんたち
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