「決して窓からお顔を出しちやいけない。又どんなことを狐が言つても、信じちやならないよ。あいつはおまいさんをたべて、骨ものこしやしないよ。」
そして、黒はまたどこかへいつてしまひました。
三
幸坊《かうばう》は、ふしぎでたまらないものですから、すぐにその小屋のところへ走つて行きました。けれどもそのときにはもうおんどりは小屋のうちにはいり、なかから窓をしつかりしめてゐます。
「とうと[#「とうと」に傍点]や、とうと[#「とうと」に傍点]や!」
幸坊は大きな声を出して呼びながら、小屋のまはりをまはつてみますけれど、中はひつそりとして音もしません。
「とうと[#「とうと」に傍点]や、私《わたし》だよ。狐《きつね》ぢやないよ。私だよ。」
幸坊はしきりに窓の戸をたゝいて、をんどりを呼びましたけれど、狐だと思つて、戸を開けません。
「いけないよ、狐さん、私《わたし》をだまして、おまへ私をたべてしまつて、骨ものこさないつもりだらう。」
「さうぢやないよ。私《わたし》だよ。おまいを飼つてやつてる幸坊だよ。狐なんかゐやしない。」
「うそだ。狐さんだ。幸坊ちやんのまねをしてゐるんだ。」
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