金の冠をもつたかはいゝ鶏《とり》ちやん、
つや/\光つた、かはいゝ小頭、
絹のおひげをたらした鶏《とり》ちやん、
窓をごらんな、小さな窓を、
こゝに、りつはな人が来て、
おいしいお豆をまいてゐる、
それでもだれもひろやせぬ。
[#ここで字下げ終わり]
 すると、小さな窓があいて、ひよつこり小さな頭を出したのは、幸坊のをんどりでした。
「あらツ! とうと[#「とうと」に傍点]がゐる!」
 幸坊が声をあげて、走り出したときには、もうおそかつたのです。狐はすぐとうと[#「とうと」に傍点]にとびついて、とうと[#「とうと」に傍点]をとつて、じぶんの巣へくはへて走りました。
「あれ、黒ちやん、狐がわたしをとつてまつ暗な森へ、私《わたし》の知らないところへつれて行く。黒ちやん、早く来ておくれ、たすけておくれ!」
 すると、ふしぎなことには、幸坊の黒猫がどこからか出て来て、ベースの球みたいに、はやく、ぶつ飛んで、狐のあとを追つていき、大きな爪《つめ》を狐の背に打ちこみましたので、狐は痛がつて、鶏をはなしてにげました。
「気をつけなさいよ、とうと[#「とうと」に傍点]ちやん。」と、猫は言ひました。
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