まづ四隅《よすみ》の柱と横の桟とは黄金《きん》で作り、彫刻《ほりもの》をして、紅宝石、碧玉《へきぎよく》、紫水晶などをはめそれに細い銀の格子が出来てをりました。籠の天井は七色の絹の糸の網で、寵を吊《つ》るす紐《ひも》は皆|簪《かんざし》の玉にする程の大きな真珠がつないでありました。
 それから又喰べるものは、皆おいしい摺《す》り餌《ゑ》で、「鶉の頭《かみ》」といふお役が出来て、籠の掃除やら、餌の世話など一切をいたします。朝は王様がお后《きさき》と御一緒に表の御殿へおでましになると、その御坐近くの柱に籠がかけられ、夕方お寝間へお下りになると、そのお次の間に籠が置かれます。誠に結構な身の上となりました。
 併《しか》しどういふものか子鶉は、ちつとも嬉《うれ》しさうなそぶりも見せなければ、物も喰べず、又一つも謡ひもせず、夜も昼も悲しさうに首を垂れて何やら考へてをりました。
 幾日たつても子鶉は、そのとほり物を喰べず、謡ひもせず、だん/\と眼が凹《くぼ》んで、痩《や》せてきますので、王様は大変不思議に思召《おぼしめ》して、或時《あるとき》籠に近く寄つて、かうお尋ねになりました。
「鶉や/\、お
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