特に純潔の神バルドル Baldr の再來は、キリストの復活とよく似てゐます。
       五、『エッダ』の各篇
 然しバルドルの死は全然キリストのそれとはちがひます。それは此の篇の補遺とも見るべき、『バルドルの夢』Baldrs drumar に斯ううたつてあるのでわかります。
 惡夢を見たバルドルの身を心配したオージンは巫女にきいてみると、自分の息子の爲、冥土の國では、もう座席を設けてゐるといふことが分りました。バルドルの母フリッガ Frigga はそれを知つて、非常に驚き、悲しみ、バルドルが夭折しないやうにと、あらゆるものに、バルドルに危害を加へないやうにと約束をさせましたが、只、やどり木だけは小さな、つまらぬものと思つて、うつかりと約束をしなかつたが爲に、それで造つた矢に射られて死んだといふのであります。ギリシヤ神話のアキレスの致命の踵がここでは、武器の方に移つてゐるのは面白いではありませんか。またこれは濃やかな母性愛をあらはした、北歐神話中の名篇であります。
『エッダ』の中にはこの外に、主神オージンの箴言集、教訓集のやうな『ハァ※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]マール』Ha
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