らざりき。
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太古 天地 の初めは渾沌として無であつた。その渾沌の中にブゥルの子たち、即ち、オージンとその兄弟ヴィリ、ヴェとが國造りのわざをする。その業とは巨人ユミールを殺すことでした。巨人の血は大海に滿ち、その骨は大山嶽となり、齒は巖となり、頭蓋は天に、髮は樹木に、腦味噌は雲になつたといひます。そこで形勢が變つてアスガルド、即ち神の國が出來ましたが、神々もまた運命を免がれることは出來ません。殺戮の罪や、契約違犯の罪など、樣々な罪を犯した神國には、巨大な海蛇や、死の船や、冷酷な惡魔ロキや、地獄のムスペルヘイムの怪人、火の巨人スゥルトウなどが、ぞく/\と押し寄せて、破滅の力をふるひ、主神オージンは狼フェンリルに殺され、雷神トォルは海蛇に打負かされ、オージンの娘フレイヤは火の巨人に殺されました。さうした世の終りといふべき光景を、『エッダ』はその獨特な簡潔な表現で、斯う歌つてをります。
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天つ日は暗く、
大地はわだつみに沈み、
熱き星々は空より落ち、
烈しき湯氣はうづまきぬ。
生命を養ふ火は、
焔と立騰りて、
み空をこがしたりき。
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