の時代の文學は寫實的であり、問題的であり、自由戀愛、個人の自由、婦人の解放などに力を入れたのがその特徴であります。
二十三、結論
私は前に、ローマン主義がスカンヂナヴィア文學の主流であるやうに申しましたが、この事はいつの時代の何人の作を讀んでも直ちに感ずる處であります。スカンヂナヴィアには遂に一人のフロォベルもモォパッサンも出ませんでした。所謂四大文豪以來、現在までの大勢を支配するものはやはり寫實を基とした新ローマンチックであります。我々がよく知つてゐるヨハン・ボーエルを、北歐のモォパッサンなどといふ人がありますが、これは極めて淺薄な見方で、彼は徹頭徹尾ローマンチストで理想家であります。ハムスンの如きは、自分の自然主義的色彩をもつ『飢ゑ』から『パン』(拙譯『白夜の牧歌』)の如き自然に耽溺する夢想の作家となり、『土の惠み』以來漂浪主義となつてをります。ビョルンソンとは形の變つた農民文學のハンス・エ・キンク Hans E. Kinck 又現にその方面で活躍してゐるオーラヴ・ドウン Olav Duun、カトリック主義のシグリド・ウンセット Sigrid Undset 等のノル
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