うとしましたが、ニナール姫はとめました。
「まづ塔に兵隊をやつて、内からも外からも、馬賊が出入りのならぬやうにして下さい。それも中の馬賊に知られると、ジウラさんを殺すやうなことになるといけませんから、ジウラさんは、あとで、私《わたし》たちがいつて、うまく、けいりやくで、内の馬賊を押へて置いて、それから助け出しませう。それよりもさきに、此処《ここ》へ、守備隊長をよんで、このことを話して兵隊を二三人つれて来させ、それから厩頭《うまやがしら》のウラップに、アルライを此処へつれて来るやうに言付けて下さい」
 ニナール姫の手配はまるで、りつぱな警察署長のやうに、よく行きとゞいたものでした。で、お父様もすつかり感心して、そのいふとほりにしました。
 アルライは、まさか自分の悪事がつゝぬけに御主人の耳にはいつてゐるとは知りませんが、たつた今、悪《わ》るいことをして、帰つて来たばかりのところへ、こんな夜更けによび出されるのを不審に思つた、不安心な様子でした。
 アイチャンキャラ侯はアルライが広間へはいつてくると、眉《まゆ》をつり上げて雷のやうな声で叱《しか》りつけました。
「貴様はふらちな奴だ。主人の
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