空屋
宮崎湖処子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)麑島謀反《かごしまむほん》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)正月|阿園《おその》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]秧《そうおう》すみて
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     上

 麑島謀反《かごしまむほん》の急報は巻き来たる狂瀾《きょうらん》のごとく九州の極より極に打てり、物騒なる風説、一たびは熊本城落ちんとするの噂《うわさ》となり、二たびは到るところの不平士族賊軍に呼応して、天下再び乱れんとするの杞憂《きゆう》となり、ついには朝廷御危しとの恐怖となり、世間はみずから想像してみずから驚愕《きょうがく》せり、ただ生活に窮せる士族、病人に棄てられたる医者、信用なき商人、市井の無頼らが命の価を得んとて戦場に赴《おもむ》くあるのみ、他は皆南方の風にも震えり、しかれども熊本城ははるかに雲のあなたにて、ここは山川四十里隔たる離落、何方《い
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