空屋
宮崎湖処子
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)麑島謀反《かごしまむほん》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)正月|阿園《おその》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]秧《そうおう》すみて
−−
上
麑島謀反《かごしまむほん》の急報は巻き来たる狂瀾《きょうらん》のごとく九州の極より極に打てり、物騒なる風説、一たびは熊本城落ちんとするの噂《うわさ》となり、二たびは到るところの不平士族賊軍に呼応して、天下再び乱れんとするの杞憂《きゆう》となり、ついには朝廷御危しとの恐怖となり、世間はみずから想像してみずから驚愕《きょうがく》せり、ただ生活に窮せる士族、病人に棄てられたる医者、信用なき商人、市井の無頼らが命の価を得んとて戦場に赴《おもむ》くあるのみ、他は皆南方の風にも震えり、しかれども熊本城ははるかに雲のあなたにて、ここは山川四十里隔たる離落、何方《い
次へ
全36ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮崎 湖処子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング