んか。
女「どうだか。
山「かつてなしだ。
女「フーン」と笑っている。下女のお清がバタバタ中だんまであがって来て。
清「御新《ごしん》さん御新さん。玉子屋がきましたヨ。
女「今日はいらないヨ。
清「でももうありませんヨ。
女「いらないヨ。
清「あれだもの。いつでも二階へあがると。ちょッくらちょいとおりてきやアしないよ」とぶつぶついいながら台所へきて。
清「おばアさん今日はいらないとヨ。
婆「ハイハイありがとうござります。またおねがい申します。
清「マアかけて一ぷくおのみヨ。
婆「じゃア少し休ましておもらい申そうかね。ドッコイショ。おめえさまはいつも身ぎれいにしていなさるネ。しの原様の女中|衆《しゅ》とおめえさまばかりだ。身ぎれいにしているは。だが篠原さんのは洋服だからおかしい。
清「おやおまえ篠原さんへはいるの。
婆「アア行くどこじゃアない。いいお得意様サ。三日にあげず五六十ズツもかっておくんなさらア。
清「じゃアあの嬢さんもみたろう。美しい女だろう。
婆「いい女にゃアちげえねえけれど。わたしらが目には高島田のほうがいいのさネ。
清「あの嬢さんはうちの山中さんネ。
婆「ムムあのいい男か
前へ 次へ
全69ページ中10ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三宅 花圃 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング