ば》も。まことの色をみる人のなみ。
 へんに慷慨《こうがい》な歌だネエ。どんな人がかいたのかしらんが。歌はイイネ。実に高尚《こうしょう》ないいものだ。
男「おばアさん。こりゃアどんな人がかいたのかしるまいネエ。多い中だから。
婆「どれでござります。アアそれは大方今十五ばかりのお坊さんと。一しょに休んでおいでなすった。お嬢さんのでございましょう。
篠「エ女……。なるほど女の手のようだ。これやア貫之風《つらゆきふう》だ。しかし歌というものは実に美術の一つで。なくっちゃアならないものサ。このごろの西洋家は玩弄物《がんろうぶつ》のようにいう人もあるそうだが。実にそういうものじゃアない。そうして歌をよみつけると。簡短に意味の深い文章がかけてくるし。幾分か気が高尚になる。一体女学校なんザア。和歌の一科をいれてもいいのサ」ト咄しながら向うのきしにさしかかれば。こなたにやすめる松島葦男。目早くみとめて。
葦「ねえさんねえさん宮崎さんが。
秀「オヤオヤ。どうも誠にその後はお目にかかりませんで。
宮「ヤアこりゃアいいところでお目にかかって。お二人ぎりかネ。
葦「あの姉があまり内にばかりいますから。すすめて
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