やレセップ[#「レセップ」に傍線]にならおうとおもう。
宮「ヒヤヒヤもっとも賛成だ。
篠「それだから交際上手の女房などは。すこしも望まんのサ。僕が好みの女房は。まんざら文盲でも困るが。婦人の美徳と称する従順の徳があって。少しく文字も読め斉家《せいか》の道に勉力してもらいたい。弾《は》ねた性質に世界の酸素を交ぜて。おてんばという化合物になったのなんざア好まない。いわば蹈舞の上手より毛糸あみの手内職をして。僕が活計を助けるというようなのがほしい。
斎宮「ナニ僕の活計だと。華族様などはとかくけちなことをいいたがるものだ。アハハハハ。
 一同笑いになりたるとき。
船頭「八百松屋《やおまつや》アー。
 桟橋《さんばし》に茶やの女の下駄の音カラコロカラコロ。
女「おはようござりました。

     第九回

 篠原勤は英国ケンブリジの学校に螢雪《けいせつ》の功を積み。ついに技芸士の称号を得。なお帰途《みちすがら》欧州各国に歴遊し。五カ年の星霜を経てようやく帰朝せしに。養父は思いがけなく華族に列せられ。家の面目この上もなき重ね重ねのめでたさに。何不足なき身ながらも。かねてより結婚の約束ある。浜子のそ
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