い。彼等にはその方が向いているんだから。そして、三人のうちの一人が、その目を或る時間の間使うと、それを眼窩《めのあな》からはずして、次の番に当った姉妹《きょうだい》の一人に渡す。するとその一人が、すぐそれを自分の頭に嵌《は》めて、明るい世間を見て楽しむというわけなんです。だから、三人の白髪の婆さんのうち誰か一人だけには物が見えるが、ほかの二人は真暗闇《まっくらやみ》だということ、それから、その目が手から手へと渡されているちょっとの間は、この可哀そうなおばあさん達の誰もが、ちっとも物が見えないということが、すぐ分るでしょう。僕は今まで、いろいろ変ったことを沢山聞きもし、また自分で見たことも少なくありません。それにしても、みんなで一つの目から覗いているというこの三人の白髪婆さんにくらべることが出来るほど不思議なことは一つもなかったと思います。
パーシウスもやっぱりそう思ったのでした。そして、どうかすると、彼の道連れが彼をからかっているのであって、世の中にそんな婆さん達なんてあるものかと考えたほどでした。
『わたしが本当のことを言ってるかどうか、今に分るよ、』とクイックシルヴァは言いました
前へ
次へ
全307ページ中37ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三宅 幾三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング