なものを持っていて、その人の手にかかったら、どんなものでも退屈で、面白くなくなるってこともあるわねえ。』
『まだ年も行かないのに、君はなかなか辛辣《しんらつ》だね、プリムロウズ、』と、ユースタスは彼女の批判のきびしさに驚いて言った。『でも、いくら意地悪の君だって、僕がマイダスの古い金をすっかり新しく磨き上げて、それを今までになく光らせたということは、十分わかるだろう。それから、メアリゴウルドの像なんかはどうだい! その辺がなかなかのお手際だとは思わない? そして、この話に含まれた教訓も、僕は大変うまく出して、それをまた深めたと思っているんだが。スウィート・ファーンやダンデライアンやクロウヴァやペリウィンクルの意見はどう? この話を聞いても、君達のうちには、何でも金にする力がほしいなんていうような馬鹿がいるかしら?』
『あたし、右の人さし指で何でも金にする力があって、』と十歳《とお》になる女の子のペリウィンクルが言い出した、『その代り、金にしたものが気に入らなかったら、左の人さし指で、もと通りにすることが出来るといいと思うわ。そしたら、今日のお昼からでも、早速やって見たいことがあるんだけど!』
『どんなことか聞き度《た》いもんだね、』とユースタスは言った。
『だって、』とペリウィンクルは答えた、『あたし左の人さし指で、この辺の金色になった木の葉をみんなさわって、すっかりもとの緑にして見たいんですもの。そしたら、いやな冬なんかその間になくて、すぐまた夏になるでしょ。』
『おう、ペリウィンクル!』ユースタス・ブライトは叫んだ、『そりゃ君間違っているよ、そしていろいろ困ったことが出来るよ。僕がもしマイダスだったら、今日のような金色の秋の日を幾度でも繰り返して、一年中つづくようにするほかは、なんにもしたくないね。僕のいい考えは、いつもあとになって浮かぶんでね。僕はどうして、マイダス王が年取ってからアメリカへ来て見て、ほかの国に見るような陰気な秋を、この辺のような輝くばかりの美しい姿に変えたということにしなかったんだろう? つまり彼が自然という大きな書物の頁《ページ》を金色に塗り上げたという風にね。』
『ユースタスにいさん、』とスウィート・ファーンが言った。彼は可愛い小さな男の子で、巨人《ヂャイアント》の身の丈《たけ》は正確にいうといくらあったかとか、妖精《フェアリ》が小さいといっても幾センチ位だったかというような、こまかい質問をいつもするのだった。『メアリゴウルドはどれ位の大きさだったの、そして金になってからはどれ位の重さだったの?』
『彼女は大体君くらいの高さだったんだ、』とユースタスは答えた、『そして、金は大変重いから、少なくとも二千ポンド位はかかったね。金貨にすれば、三、四万|弗《ドル》も取れたでしょう。僕はプリムロウズが、その半分の値打もあればいいと思うなあ。さあ、みんな、この谿から上って、その辺を見ようじゃないか。』
彼等はそうした。太陽は正午の位置から、一、二時間廻っていたので、西陽のかがやきが谷の大きな窪みに一杯になって、なごやかな光がそこに満ちあふれて、まるで鉢になみなみと注《つ》いだ金色の酒のように、まわりの丘の間からこぼれて行きそうだった。昨日もちょうどこんなだったし、明日もまたちょうどこんなだろうに、思わず、『こんないい日は今迄になかったなあ!』と言わずにはいられなくなるような日だった。ああ、しかし一年を通じて、こんな日はそうざらにあるものではない! こうした十月の日は、その日その日が大変長いような気がするのが、その著しい特長である。ところが、この季節には、太陽はどちらかというと、ぐずぐずとおそく上って、そのくせ行儀よく六時か、或はもっと早く、ちょうど小さな子供達がしなければならないように、さっさと西の山に眠ってしまうのである。だから、われわれはその頃の日が長いなんて言えないのだ。しかし、どういうものか、その短さも、そのたっぷりした幅の広い感じで補われるのである。そしてひいやりとした夜になると、両腕で抱え切れないほど、今朝から人生を楽しんだという気がするのである。
『さあ、さあ、みんな!』とユースタス・ブライトは叫んだ。『もっと、もっと、もっと胡桃《くるみ》を拾って! 君達の籃《かご》一杯にするんだよ。そしたら、クリスマス時分には、僕がみんなにそれを割って上げて、いろいろいい話を聞かして上げるからね!』
こうして彼等は帰って行った。彼等はみんな大変な元気だったが、ただ一人小さなダンデライアンは、可哀そうに、栗のいがの上に坐っていたので、その刺《とげ》が針山にささったように彼にささっていた。まあ、彼はどんなに痛かったことだろう!
[#改丁]
タングルウッドの遊戯室
――「子供の楽園」の話
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