あたし達の眼を返しておくれ!』
『彼等が君に、飛行靴《とびぐつ》と魔法の袋と隠兜《かくれかぶと》とを持っている水精《ニンフ》達の居る所を教えてくれたら、すぐにも眼を返してやろうと彼等に言い給え、』と、クイックシルヴァはパーシウスに耳打しました。
『親切な、立派なおばあさん方、』とパーシウスは白髪婆さん達に向って言いました、『何もそんなにびっくりなさることはありません。僕は決して悪い男じゃないんです。あなた方が僕にニンフ達の居処を教えて下されば、すぐにあなた方の眼を、そっくりそのまま、もと通りよく光っているのをお返しします。』
『ニンフ達だって! これはまあ! 姉妹達、この人はどんなニンフのことを言ってるんだろうねえ?』とスケヤクロウは叫びました。『何でもいろんなニンフがいるそうだよ。森で猟をしているのもあれば、樹の中に棲んでいるのもあり、また泉の中で楽しく暮らしているのもあるそうだ。あたし達はニンフ達のことはちっとも知らない。あたし達は三人の不仕合せな婆さん共で、うす暗がりの中をうろつき廻っていて、仲間に眼が一つしかない。それをお前さんが盗んでしまいなすった。おう、何処の人だか知らないが、それを返しておくんなさい!――どなただか知らないが、それを返して下さい!』
 その間も始終、三人の白髪婆さん達は手をのばして探りながら、一生けんめいにパーシウスをつかまえようとしました。しかし彼はつかまらないように十分気をつけました。
『立派なおばあさん方、』と彼は言いました――というのは彼のお母さんは彼に、いつも出来るだけ丁寧に口をきくようにと教えていたからです――『僕はあなた方の眼を、しっかりと手に持っています。そしてあなた方がニンフの居処を教えて下さるまで、それを大切に預かっておきましょう。僕の言っているのは、魔法の袋と、飛行靴《とびぐつ》と、それから――何だったっけ?――そう、隠兜《かくれかぶと》とを持っているニンフ達のことなんです。』
『おやまあ、姉妹達! この兄さんは何のことを言ってるんだろうねえ?』スケヤクロウとナイトメヤとシェイクヂョイントとは、如何にもびっくりしたような風に、お互に叫びました。『一足《いっそく》の飛行靴《とびぐつ》とあの人は言ったよ! もし彼がうっかりそんなものを履《は》こうものなら、彼の踵《かかと》がぽいと[#「ぽいと」に傍点]頭よりも高く飛び上
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