もあるかのように、いうことをきき出しました。僕の本当の気持をいうと、あんなにあばれた馬が、急にこんなにおとなしくなったのを見ると、何だか悲しくなるくらいでした。そしてペガッサスは、自分でもやはりそんな気持がしたようでした。彼はつい今しがた、らんらんと火を発していたその美しい眼に、今度は涙をうかべて、ビレラフォンを振り返って見ました。しかし、ビレラフォンが彼の頭を軽く叩いて、ふたことみこと威厳のある、しかしやさしく慰めるような言葉をかけると、ペガッサスの目つきはまた変って来ました。というのは、何百年もの間、ひとりぼっちでいたあとで、こうして友達とも主人とも思う人が見つかったことは、彼も心の中で喜んでいたからです。
 翼のある馬とか、すべてそういったような荒々しい、ひとりぼっちの動物は、必ずそうしたものです。もし彼等をつかまえて、圧倒してしまうことが出来れば、それが彼等の愛情を得る一番たしかな道でした。
 ペガッサスは全力をつくしてビレラフォンを背中から振り落そうとしている間に、随分遠い道を飛んでいました。そして、くつわが彼の口にはめられるまでに、或る高い山の見えるところまで来ていました。ビレラフォンは前にもこの山を見たことがありました。そして、それは頂《いただき》がペガッサスの住処《すみか》になっているヘリコン山だということが分りました。ペガッサスは、許しを乞うような風に、静かに乗り手の顔を見てから、いよいよその方へ飛んで行きました。そしてそこにおり立ってからも、ビレラフォンが背中からおりてくれるまで、辛抱強く待っていました。そこでその青年は、馬の背中から飛び降りましたが、まだ手綱をしっかりとつかんでいました。しかし、ビレラフォンはペガッサスと目を見かわして、そのおとなしい様子と美しさとに打たれ、それが今まで送って来た自由な生活のことも考えて、もしもペガッサスが本当に、自由を望んでいるならば、こうして手綱でしばっておくに忍びない気がして来ました。
 急に湧いて来た、こうした義侠心に駆られて、ビレラフォンは、魔法のかかった手綱をペガッサスの頭からはずし、くつわも口から取ってやりました。
『ペガッサス、僕を捨てて行け!』と彼は言いました。『僕を捨てて行くか、僕を愛するか、二つに一つだ。』
 その翼のある馬は、ヘリコン山の頂《いただき》から、まっすぐに上の方へ飛んで行って、
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