ぐり合ったものとして、仕合せに思ってくれるだろう。まあ聞いてくれ、パーシウス、わしは美しいヒポデイミヤ姫と結婚しようと思っている。ところが、こうした場合、花嫁に対して何か遠い国から持って来た美事《みごと》な珍品を贈るという習《ならわし》になっている。正直なところ、わしは彼女のようなすぐれた趣味を持った姫の気に入りそうなものを、何処で手に入れたものかと少々困っていた。しかし今朝になって、それにうってつけの品物を思いついて、われながら得意になっているのじゃ。』
『して、それを手に入れますについて、私が陛下のお役に立つことが出来ますでしょうか?』とパーシウスは熱心に叫びました。
『出来る――もしお前がわしの信じているほど勇敢な若者であったなら、』とポリデクティーズ王は、この上もなくやさしい調子で言いました。『わしが是非美しいヒポデイミヤに捧げたいと思っている婚礼の贈物は、頭に蛇の髪が生えたゴーゴン・メヅサの首じゃ。そしてパーシウスよ、わしはお前の力でそれを取って来てもらいたいと思っている。そんなわけで、わしは姫との話を取りきめたいと熱望しているので、お前がゴーゴンを探しに出かけてくれるのが早ければ早いほどうれしいのじゃ。』
『明朝出発いたします、』とパーシウスは答えました。
『どうかそうしてくれ、わが天晴《あっぱれ》の若者、』と王様も言いました。『それから、パーシウス、ゴーゴンの首を切る時、その形を害《そこな》うようなことのないように、ばっさりと、きれいに切るように気をつけてくれ。お前はそれを、美しいヒポデイミヤ姫のすぐれた趣味に適《かな》うように、少しもいためないで持って帰らなければならない。』
パーシウスは王宮から下がって来ました。ところが、彼がやっと聞えない位の所へ行くか行かないうちに、ポリデクティーズは、わっはっはと笑い出しました。彼はいかにも悪い王様だけに、その若者がこうまでたやすく罠《わな》にかかったのを見て、ひどく喜んだのでした。パーシウスが蛇の髪をしたメヅサの首を切って来ることを引受けたというこの噂は、すぐぱっと世間にひろがりました。みんなはうれしがった、というのは、この島の住民達は大抵、王様に負けないくらい悪い人達で、何か大変なわざわいがダネイとその息子の上に起ることを、何よりも喜んだからです。この不幸なセライファス島には、あの漁師ただ一人しか善人はい
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