出来事から、わたしは、少くともそう判断したのさ。』
『こうした気まぐれな想像でやっている話を、おじさんなんかに聞かれるのは、ちょっと困るなあ、』と学生は言った。
『そうかも知れない、』プリングル氏は答えた。『しかし、一番苦手だという気がする人こそ、若い作家にとって最も有難い批評家じゃないかとわたしは思うんだが。だから、是非わたしに聞かしてくれたまえ。』
『同情ということも、批評家の資格として、多少なくてはならないと僕は思うんです、』ユースタス・ブライトは、つぶやくように言った。『しかし、おじさん、辛抱して聞いて下さるなら、僕話を考えましょう。しかし、僕は子供達の想像と共鳴とを目やすとして話すのであって、おじさんにむかって話すんじゃないということを、頭においといていただきたいんです。』
そこで、学生は心に浮かんだ最初の題目《テーマ》を捉えた。それは、ちょうど彼が炉棚の上に見つけた一皿の林檎から思いついたものであった。
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三つの金のりんご
ヘスペリディーズの庭になっていたという金《きん》の林檎《りんご》のことを君達は聞いたことがありますか? ああ、もしも今そんなのが果物畑になっているのが見つかったとしたら、一ブッシェルでも大したお金《かね》になろうというような林檎でした! しかし、この広い世界にも、その林檎から接木《つぎき》した木は一本だってないだろうと思います。その林檎の種一つぶだって、もうありはしません。
そして、ヘスペリディーズの庭がまだ雑草で蔽われていなかった、古い、古い、半分忘れられてしまったような昔でさえも、たいていの人達は、中まで金《きん》で出来た林檎がその枝になっている木が本当にあるかどうか、うたがっていました。みんなその話を聞いていたのですが、誰もそれを見たおぼえはありませんでした。それでも、子供達は、金の林檎のなる木の話を夢中になって聞いていて、大きくなったらそれを見つけてやろうと思いました。仲間の誰よりも勇ましいことをやって見たいと思っている冒険好きの青年達は、この林檎を捜しに出かけました。彼等の多くは、そのまま帰って来ませんでした。勿論、そんな林檎を持って帰ったものは一人もありません。誰が行っても、それをもげないのも無理はありませんでした。その木の下には一疋の竜がいて、その竜の頭は百の蛇になっていて、そのうちの五十
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