山を想ふ
水上瀧太郎

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)世間《せけん》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)桔梗|紫苑《しをん》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ペロリ/\と舌を出して
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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[#ここから2字下げ]
富士の嶺はをみなも登り水無月の氷のなかに尿垂るとふ
[#ここで字下げ終わり]
 與謝野寛氏の歌だ。近頃の山登の流行は素晴しい。斷髮洋裝で舞踏場に出入し、西洋人に身を任せる事を競ふ女と共に、新興國の産物である。一國の文化に古びがついて來ると、人々は無闇に流行を追はなくなるが、國を擧げてモダアンといふ言葉に不當の値打をつけてゐる心根のはびこる限り、生理的に山などへ登つてはいけない時期にある娘もいつしよになつて神域を汚す事は、活動寫眞じこみの身振と共にすたらないであらう。高きに
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