作品の特質傾向及び夫人の作品の弱點短所を簡略に抽出し度いと思つてゐたが、それはこゝ迄の長々しい批評の中に斷片的ながら云ひ盡されて居るやうに考へられるのでやめる事にした。
或文壇の老大家が曾て人に語つて「俺は女の書いた物は何でも面白い。女の書いた物だと思ふと惡口は云へない。」と云つたといふ巷《ちまた》の噂を聞いた事がある。けれども明治大正にかけて、吾々の時代が生んだ女流作家中、歌人與謝野晶子氏と小説家樋口一葉女史以外に、無條件に推讚し得る人が何處にあるか。殆どすべての女流作家は、單に女だといふ先天性の爲に、文壇の色どりとして介在してゐるに過ぎない。たま/\野上彌生、中條百合子二氏の如き、かなりいゝ素質を持つてゐるらしい人が現れても、自制心の缺乏から、中途にして邪路に踏入つてしまふ時、同じくよき素質を持ちながら、多年創作の筆を續けながら、尚且自己の特質を自覺しないらしい岡田夫人を惜しいと思ふ。
あまり度々引合ひに出して濟まないが、久保田万太郎氏の如きは、今日迄の岡田夫人の作品を見ても、夫人は現代女流作家中唯一の勝れた作家だと云つてゐるが、自分は左程に思はない。しかし夫人が今後ほんとに自
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