貝殼追放
「文明一周年の辭」を讀みて
水上瀧太郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)出《いで》しより
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)文明[#「文明」に傍点]を
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大正元年の秋海外の旅に出《いで》しより余の永井荷風先生に見《まみ》えざる事既に久しく、昨年十月歸朝以來常にお目にかかり度くおもひながら、機を得ずして遂に今日に及びたりしが、この度「文明一周年の辭」を讀みて更に痛切に余の先生に見えざる事久しきをおもへり。
「三田の文人中近く海外より歸來せしもの文明[#「文明」に傍点]を一覽して甚しく余が藝術家としての態度の不眞面目なるを攻撃したりと聞く」といふ一事より出發して先生の「文明一周年の辭」は起草せられしものなりとぞ。
三田の文人中近く海外より歸來せしものとは余の事なりと聞く。果して然らば余の迷惑之に過ぎず、捏造は新聞記者の仕事なりと思ひゐたるに、慮《はか》らざりき永井先生によりてかかる記事の捏造せられんとは。
余は曾て永井先生の藝術家としての態度を不眞面目なりと思ひたる事なければ從つて甚しく攻撃[#「甚しく攻撃」
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