大阪毎日の記者に勝るとも劣らない黒人《くろうと》藝である。或は自分の言葉は、勿論まともに取る可きものとは思はなかつたが、一寸標題として人目を引き易い爲、わざとそのまゝ載せたのかもしれない。怖ろしいのは、洒落の解らない奴よりも、責任感の無い奴が一層だと思はざるを得なかつた。
 此の記事によると、初めて自分の廢嫡問題なるものを捏造掲載した時の標題は「廢嫡されても文學を」といふのであつた。淺薄な流行唄《はやりうた》の文句のやうなこんな標題で、ありもしない惡名を書き立てられたのかと思ふと、自分の心は暗くなつた。
 あまりにくだくだしい捏造指摘は自分ながら馬鹿々々しいから止めるが、日本新聞界の兩大關と自稱する毎日朝日の記者が、一人の口から出た事を、全然違つて聽取つた事實を、此の二つの記事を對照して見る人はあやしまなければならない筈だ。二人とも全然自分勝手な腹案を當初から持つてゐて、記事の大部分は、自分に面會する前に原稿として出來上つてゐたのだらうと思ふ。たゞ彼等が一致した事は、自分の黒い衣服を紺背廣だと誤り記してゐる一事ばかりであつた。毎日記者は「ハハハハハと語り終つて微笑せり」と結んだが、朝日
前へ 次へ
全27ページ中15ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
水上 滝太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング