望の貫徹に向つて進まねばならない。」
女は涙のない以前に戻つた。自分が此決心を男に打明けるに至つた迄の径路を思返して見た。身にあまる大難問が三つも四つも重《かさ》なり合つて、女の思考情願、判断を混乱させてしまつたので、たどるべき径路の系統の発見に長い間苦しんだ。どうしても棄てることの出来ないのは三阪等と企てたある計画であつた。之は決して棄てないから断案を一番遠くのものにつけてしまつて、それから段段近い方の問題の整理を考へた。罰金のこと蕪木のこと、それは労役に服すると云ふ方法で略解決がつくと思はれたから、最初に片付けてしまつた。自分と亨一との問題、之が彼には最も至難のものであつた。男が目立つて血色がよくなつて、段段晴晴した気分に向つてゆくのを見ると、男の愛する「生」の歓喜の前に自分の計画の全部を捧げてしまひたいと云ふ心が萌《きざ》すのであつた。そればかりではない。彼は真に男を愛して居た。普通の場合で普通の出来事が原因をして居るものならば彼はその原因を破つて破つて、どうしても男の傍に居るやうな手段に出《い》づるに違ひない。ただ彼の計画は普通の場合でない、普通の事件でない。彼は生命を犠牲に
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