かげんにその後からついて行く。向うの病舎の庭がつきるあたりの門の側には、太田に執行停止の命令を伝えるためであろう、典獄補がこっちを向いて待っているのが見える。――そして担架でかつがれて行く太田が、心持ち首をあげて自分の今までいた方角をじっと見やった時に、彼方の病室の窓の鉄格子につかまって、半ば伸び上りかげんに自分を見送っている岡田良造の、今はもう肉のたるんだ下ぶくれの顔を見たように思ったのであるが、やがて彼の意識は次第に痺れて行き、そのまま深い昏睡のなかに落ちこんでしまったのである……。



底本:「日本の文学 第40巻」中央公論社
入力:山形幸彦
校正:野口英司
1998年8月20日公開
2005年12月22日修正
青空文庫作成ファイル:
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