どれもが、内から破られて以前の穴にかへつてゐた。
私がさうしてゐる間にも一匹二匹と数を増して来たらしい飛ぶ虫の翅音は立つてゐる私の周囲をめぐつて次第に高く強く聞えて来るのであつた。やがてその音は部屋うちに溢るるばかりに遍満して来た。私はその時はじめて衰へた心身にしみとほるばかりの生の歓喜を感じたのである。
[#地から2字上げ](昭和二十一年三月)
底本:「現代日本文學大系 70 武田麟太郎・島木健作・織田作之助・檀一雄集」筑摩書房
1970(昭和45)年6月25日初版第1刷
入力:j.utiyama
校正:かとうかおり
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
1998年8月26日公開
2005年12月22日修正
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